あたしを歌ってよ
あたし?
あたしが欲しいもの……。
『歌ってほしいんだ。悠馬くんのその声で、あたしの、あたしだけの、歌』
かつて。
悠馬くんに言った言葉。
「先生?」
「……先生は、先生の欲しいものは」
「うん、何ですか?」
「……休日です」
「……」
「……」
「……先生、それ、プレゼントできないやつ」
「ですね」
男子生徒は「もういいや」と、笑って去って行った。
担任を受け持っている二年一組の教室に行って、ホームルームを終わらせた。
わちゃわちゃした教室内で。
女子生徒が、
「えー、この人達超いいじゃん」
と、言った。
スマートフォンは授業中以外なら持っていても問題ない、という校則だけど。
なんだか気になってしまって。
あたしは近づいて行った。
「どうしたんですか?」
「あ、先生っ、見て!」
女子生徒数人グループの中のリーダー的存在である生徒が、あたしにスマートフォンを見せる。