あたしを歌ってよ
「このバンド、超いいんですよ!最近メジャーデビューしたらしくって!」
そこには、見慣れたバンド名の文字が書いてあった。
『ベイビー・サンデー』
「え?」
「この辺り出身のバンドらしいですよ!超いいのが、これ、この人!」
女子生徒は画面を操作して、あたしに再び見せた。
「この人、悠馬くんっていうボーカルの人!カッコよくないですかー?」
心臓が。
止まるかと思った。
「……先生?」
女子生徒達はきょとんとして、あたしを見ている。
「……あ、うん。カッコいいね」
なんとか笑顔を作って、返事をした。
久しぶりに見る悠馬くんは。
本当にカッコよくて。
ニッコリして写っている、その顔が。
あたしの知っている、あの悪魔の笑顔そのものだった。
その日の夜。
スマートフォンに登録したままの、悠馬くんの連絡先のページを見つめていた。