あたしを歌ってよ

健くんは笑って見ていたけれど。

悠馬くんは、
「はい、飲み過ぎー。離れろ、酔っ払い」
と、弘樹くんをあたし達から離してくれた。



「悠馬くん、優しい〜」
と、南が本当にときめいた顔をしてみせたら、そこで健くんが慌てて、
「南ちゃん、オレだって優しいよ?」
と、言った。



そんなふたりを放っておいて悠馬くんは、
「大丈夫?イヤだったよな、ごめんな」
と、あたしを気遣ってくれた。



(あぁ、ダメだ。好きになっちゃうよ)



ただ、カッコいいって。

いいな、この人って。

思っていただけなのに。



(知れば知るほど、好きになっていっちゃう)



テーブルに置いた、悠馬くんの手。

細いけれど、骨張ってる。

爪が短くて、それがまた、あたしの悠馬くんへの印象を良くした。



(この手に触れたい)



強く思った。



触れても、許してもらえる女の子になりたい。



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