あたしを歌ってよ
メッセージの着信だと思っていたけれど、電話がかかってきているとわかって、更にあたしは緊張した。
「……もしもし」
緊張した声で、電話に出た。
電話の向こう。
悠馬くんがかすかに笑ったような気配。
『もしもし、鞠奈?』
六年ぶりの、悠馬くんの声。
六年ぶりに、その声であたしを呼んでくれた。
「悠馬くん、久しぶり」
『うん。元気だった?』
「元気だよ。あたし、先生になる夢、叶えたよ」
悠馬くんは「すごいじゃん」と言って、
「良かったな。鞠奈、頑張ったんだな」
と、優しい声で言ってくれた。
(泣きそう……)
悠馬くんはどこにいるんだろう?
電話越しじゃ歯痒くて。
「悠馬く……」
と、声をかけたその時。
窓の外で救急車のサイレンの音。
『救急車が通ります』という音声が流れている。
サイレンの音が。
その音声が。
電話の向こうからも聞こえてきた。