あたしを歌ってよ

第三話 運命の恋


マンションの入り口。

植え込みの前に。

金色に輝く髪の、男性がひとり。



「悠馬くんっ!」



かけ寄って、名前を呼んだ。

悠馬くんはこちらを見て、
「鞠奈」
と、顔をほころばせた。



それから、
「ごめん。こんなところまで来て」
と、小さく頭をかいた。



「ううん、嬉しい」



あたしは笑顔で、
「デビュー、おめでとう!頑張ったんだね」
と、伝えた。



「うん。……やっと、実ったよ。オレの夢」



その言葉に。

悠馬くん達、『ベイビー・サンデー』の。

努力と。

苦労が。

滲んでいる気がした。




「『運命の片想い』、聴いたよ」



悠馬くんはうつむいて、
「うん」
と、うなずいた。



「あの曲を聴いた時、思っちゃったの。あぁ、あたしの曲だって。あたしだけの、悠馬くんの歌だって」



悠馬くんの反応が少し怖くてドキドキしながらそう言うと、悠馬くんは優しい声で、
「うん。鞠奈に届いて良かった」
と、言ってくれた。


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