あたしを歌ってよ
「鞠奈ちゃん」
悠馬くんの声が、耳に甘く響く。
目が合った。
「……あの、悠馬くん」
「何?」
(こういうこと、あたしから聞くのって変なのかな?)
キスをしてもいい?って。
冷静な心がどこかへ飛んでいっちゃったみたい。
心臓が破裂しそうに動いている。
唇をそっと寄せるように、あたしは目を閉じた。
……だけど。
「ごめん、ちょっと待って」
悠馬くんがあたしから離れた。
(あ……、何これ)
ものすごく恥ずかしい気持ちが、足元から脳内めがけて走ってくる。
「ご、ごめんなさい!」
と、思わず謝る。
「あ、待って。誤解しないで。嫌じゃないから」
「え?」
悠馬くんはくしゃっと笑って、
「ごめん。完全にオレが悪い」
と、うつむいた。
それから、
「オレ、恋人がいるんだ」
と、呟く。
「え、えっ!?」