秘め事は社長室で
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ゴールデンウィークが終わり、休みボケ……している暇は無かった。なぜなら仕事は待ってくれないからだ。なんなら、休みが挟まったことによって忙しさが増している。
「ほら、そろそろ帰るぞ」
眉間に皺を寄せながらスプレッドシートを睨みつけていると、断りもなく扉が開けられた。
ノックもせず我が物顔で入ってくる人物なんて、この会社に一人しかいない。顔を上げると、ズカズカと目の前まで歩いてきた副社長は、私のノートパソコンをパタンと閉じた。
「毎回送ってくれなくてもいいんですよ、本当に」
言いながら閉じられた画面をまた開くと、鋭い視線が飛ぶ。
「ファイルを保存するだけです」
「早く準備しろ」
だから、別に先に帰ってくれてていいのに……。
備え付けのソファーに深く腰をかけて、頑として私を待つ姿勢を崩さない副社長。
なぜかここ最近、やたら家まで送ってくれるのだ。特に夜遅くなると絶対に。「女なんだから遅くまで残るな」なーんて、ちょっと前のこの人なら絶対に言わないようなセリフまで添えて。
「すみません、お待たせしました」
ここまで言われて仕事を続けるわけにも行かないので、手早く支度を済ませて声を掛ける。
ん、と頷いた副社長が長い脚を惜しみなく使うものだから、私は小走りで後を追う羽目になった。
「失礼しま~す……」
最初は緊張していたけれど、何度も送られるうちにすっかり慣れてしまった助手席。
とはいえ、私より遥かに忙しく責任の重い仕事をしている副社長の手を煩わせていることに、申し訳なさが無いわけでもない。