秘め事は社長室で


はあ?

ぴく、と米神が震える。
これから一緒に会社の経営を支えてく仲間の悪口を、こんな大事な日に、誰に聞かれるかも分からない所で陰口言ってるような貴方が役員をしてることの方が、よっぽど心配なんですけど?

それに、いくら息子とはいえ、その器がなければ贔屓して跡継ぎに据えるなんてこと、義人さんは絶対しない。

なんだか義人さんのことまでバカにされたみたいで、怒りのボルテージが跳ね上がった。そのまま突入してやろうかと思ったけど、腐っても役員。きっと私なんか簡単に丸め込まれてしまうだろう。そう思って、グッと堪える。


「大体、海外をふらついていただけの子供に、経営戦略なんか立てられるのかね」
「はは、それこそ相談役に文字どおり相談するんじゃないか?」


ム、ムカつく〜〜!!

ははは、と癪に障る笑いが耳にこびりついて離れない。
社長だって、海外経験なんかほとんどないあんたに言われたくないでしょうよ! と心の中で言い返す。
なんで私は、社長のためにこんなイライラしてるんだろう、と思いながら。

これ以上聞いてると本当にドアを蹴破る勢いで割り込んでしまいそうだったので、下唇を噛んで怒りを堪えながら、備品室に逃げ込む。

確かに、社長は意地悪だし、ムッとするところも相変わらずあるけど。でも、帰国されてから社長に就くまでのこの数ヶ月で、その優秀さは十分に伝わってきた。総会での対応ひとつとってもそうだ。

決して威圧的ではなく、丁寧に、真摯に株主へ応えながらも、芯がブレることは無い。正しいことは正しいと、そう解ってもらえるまで、何度でも言葉を尽くす。そんな姿勢を貫ける人が、この会社に一体何人いるだろう。

結局ただの負け惜しみだ。自分より遥かに若い社員が、自分の上に立つことが気に食わないだけ。

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