秘め事は社長室で
(……いや。言われたところで、社長も困るだけでしょ)
仕事に関係の無い悩みだ。体調に影響が出てしまっていることは申し訳ないけど、これはきちんと自分で対処しなければ。
それに、ここで社長を頼ってしまったら、なにかがプツリと切れてしまう気がして。そのまま、崩れ落ちてしまいそうで。
「ご心配お掛けしてしまいすみません。また何かあればご相談させてください」
だから私は、そう笑って誤魔化すしか無かった。
とはいえ、解決策が降って湧くわけでもない。
それから一週間、相変わらず時間をズラしたりしながら過ごしているものの、焼け石に水、暖簾に腕押しだ。
もういっそのこと会社に寝泊まりしたい。休日も、家にいるのが落ち着かなくて、寝不足の体に鞭打って無理やり外出したせいで、疲労はいよいよピークを迎えていた。
ギリギリ仕事に支障を出さない程度に踏ん張っているが、社長から向けられる胡乱な眼差しは強まるばかりだ。
「ふあ……ねむ」
お昼を知らせるチャイムが鳴ると同時に、机に頭突きする勢いで突っ伏す。瞼を閉じれば、一瞬で眠れてしまいそうだった。
あの日、会社のそばで視線を感じてから、昼間に外に出るのが億劫でお昼は全て睡眠時間に当てていた。
おにぎりでも握ってくればいいのだろうけど、そんな気力もなくて。
お腹は空くけど、それよりも安心して眠れる時間がここしか無いので、そっちの方が重要だった。
(午後は会議が二件と、それから……)
この後のスケジュールを反芻しているうちに、瞼がとろとろと落ちていき。
私はそのまま、意識を失うように眠りについた。