密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました



すごくリアルな夢をみた。

現実にこんな人いるんだって驚くくらい素敵な人に抱かれる夢。
気持ちいいと感じる余裕はあまりなかったけれど、男の人の重みに安心感を抱いた。

一夜の過ちなんて、現実ではまさか自分が経験するなんて有り得ない。
けれども理解し、共感してくれる優しさに心がほだされて、真っ直ぐに私を見つめる真剣さに鼓動が速くなった。

『離さないから、覚悟しろよ』

行為が終わった後も私を抱きしめて、眠るまで頭をなでてくれた。

……あれ?

目を閉じたまま夢の回想に浸っていると、下半身に違和感があることに気づいた。なんだかじんじんする。

布団の中でモゾッと寝返りを打ち、上掛けを肩まで引っ張った。
頭に金づちで打たれたような痛みが響く。完全に二日酔いだ。

目蓋の向こうは明るかった。少しずつ頭の中がクリアになってきて、急に不安に襲われる。いつも寝ている布団とは寝心地が違うのだ。

『弁護士である前に、ひとりの男としてきみに触れたい』

男性の声が頭の中で蘇り、私はハッとして薄目を開けた。

「あ……」

見慣れない空間に戸惑いながら、急速で頭の中を整理する。

『責任は取る』

あれって、夢じゃない……?

そうだ。君塚先生に唐揚げを作ってもらい、食べて身の上話をしたんだ。

それから私は迷惑なことに号泣して。

そして……。

「おはよう」
「!」

頭上から降り注いだ男性の声に驚いて、私は肩を跳ね上がらせた。

「服はこっち。今、コーヒーを淹れる」

衣服を手渡され、私は肩を小さくしながら受け取った。

「す、すみません……」

やっぱり、夢じゃない……!

呆然としているうちに、心音が狂ったように強くなる。
昨日の今日で気まずすぎる。酔っ払って号泣するなんて。

それに。

『や、やだ、離れないでくださいっ……』

あんな大胆な経験は後にも先にも初めてだ。
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