密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
「これからは、俺にきみと赤ちゃんを守らせてくれないか。ずっとそばにいてほしい」

透真さんの額が、私の頭にこつんとぶつかる。うまく息が吸えなくて、私は時間差で咳き込んだ。

透真さんの体温にやわらかく包み込まれながら、彼の言葉を反芻する。

……これからずっと、そばにいてもいいの?

「今まで軽い恋愛しかしてこなかったから、正直戸惑ってる。きみが大切すぎて、きみしか見えなくてどうにかなりそうなんだ」

名残惜しげにゆっくりと体を離した透真さんは、呆然とする私の顔を見るときゅうきゅうとした声で続けた。

「仕事の合間を縫って、何度もここへ来た。きみに会いたくて」

私は瞬きを繰り返す。

じゃあ駒津屋にいたのは、私に会いにここに来たついでに……?

聞きたいけれど、喉の奥がキュッと詰まって声にならない。
苦しくて、際限なくうれしくて、泣きだしそうな自分に気づく。

「きみはこれから、誰よりも幸せになるべきだ。俺と一緒に」

先ほどの弱ったふうな声色とはまるで正反対な、自信に満ちあふれた力強い物言い。
芯の強さを象徴するような美しい漆黒の瞳は、狼狽する私を捉えて離さない。

透真さんがくれる言葉はどれも幸せすぎる。
今すぐに彼のたくましい胸に顔をうずめて、汲めども尽きない涙が枯れるほど泣いてしまいたい。
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