密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
けれどもその前に、私は一番気になっていることを尋ねた。

「透真さんは、喜んでくれるのですか?」
「喜ぶ?」

単なるオウム返しではなく、本当に意味がわからないといった響きだった。

「赤ちゃんができたこと、です」
「当然だろ」

すぐさま強い口調で断言した透真さんは、不本意そうに息を吐く。

「俺はこれでもかってくらい思いの丈を愛の言葉にして伝えたつもりなのに、きみに届いていないのか?」

心臓がどくんと強く高鳴った。
こんな甘い台詞を耳にするなんて初めてで、一気に頬が紅潮する。

「だ、だって……! なんだかその、現実じゃないみたいで。うれしすぎて、信じられないんです」

涙声で訴える私を見て目を丸くし、透真さんはふっと観念したように笑った。

「俺のそばにいてくれ。もう一度、一緒に暮らそう」

私の腰に手を回し、微笑みながら顔に角度をつけた。

「愛してる」

まるで吸い寄せられるかのごとく顎を上げると、唇に熱が灯る。
優しく触れる口づけは、やがて陶酔するほど深くなり、私は夢のようなひとときに幸せを感じていた。



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