密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
十分ほどで退勤の時間となり、私はテーブル席でコーヒーを飲んでいる百瀬店長に向き合って座った。レジカウンターから一番離れた奥の席だ。
「石橋、元気だった?」
「はい……。百瀬店長は?」
「俺、今店長じゃないんだよ。降格されたんだ。今は葉山の下で働いてる」
「そうなんですか」
玲子さんが店長になったんだ。
葉山玲子さんは私が勤めていたときはサブ店長だった。しっかり者で優しく頼りがいのある先輩で、よく百瀬店長をフォローしていた。
「誤解を招くようなことをするなって、葉山にもさんざん怒られたよ」
百瀬店長は暗い顔でため息を吐く。
他店舗との合同交流会の夜、酔った百瀬店長を私は介抱しただけのつもりだった。
その後、帰りの方向が一緒なので同じタクシーにふたりきりで乗ったことで、不倫していると噂になってしまったんだ。
「実はうちの妻も昔は他店舗で働いてて、葉山と今でも仲がいいんだ」
ポリッと頭をかき、百瀬店長は眉を下げて笑う。
「知りませんでした……」
不倫の噂が耳に入った百瀬店長の奥さんがセレクトショップに来たとき、騒ぎだしたお客様たちに冷静に対応したのも玲子さんだった。
「石橋には本当に申し訳ないと思ってる。妻が勝手に誤解したり、暴走したのは俺のせいなんだ」
ブレンドコーヒーのカップはとっくに空になっていた。百瀬店長は、それを手持ち無沙汰に両手で転がす。
「百瀬店長のせいって……、どういうことですか?」
「恥ずかしながら俺、六年前に妻が妊娠しているときに浮気をしてね。たった一度の遊びのつもりだったんだけど、バレちゃって。それから妻がかなり神経質になったんだ」
苦笑した百瀬店長が、真面目な顔つきになって続ける。
「石橋には関係のない話なのに、巻き込んで悪かった。俺たち不倫なんてしてないのに、仕事を辞めることにまでなって、本当に申し訳ない」
百瀬店長は私に向かい深々と頭を下げた。
「石橋、元気だった?」
「はい……。百瀬店長は?」
「俺、今店長じゃないんだよ。降格されたんだ。今は葉山の下で働いてる」
「そうなんですか」
玲子さんが店長になったんだ。
葉山玲子さんは私が勤めていたときはサブ店長だった。しっかり者で優しく頼りがいのある先輩で、よく百瀬店長をフォローしていた。
「誤解を招くようなことをするなって、葉山にもさんざん怒られたよ」
百瀬店長は暗い顔でため息を吐く。
他店舗との合同交流会の夜、酔った百瀬店長を私は介抱しただけのつもりだった。
その後、帰りの方向が一緒なので同じタクシーにふたりきりで乗ったことで、不倫していると噂になってしまったんだ。
「実はうちの妻も昔は他店舗で働いてて、葉山と今でも仲がいいんだ」
ポリッと頭をかき、百瀬店長は眉を下げて笑う。
「知りませんでした……」
不倫の噂が耳に入った百瀬店長の奥さんがセレクトショップに来たとき、騒ぎだしたお客様たちに冷静に対応したのも玲子さんだった。
「石橋には本当に申し訳ないと思ってる。妻が勝手に誤解したり、暴走したのは俺のせいなんだ」
ブレンドコーヒーのカップはとっくに空になっていた。百瀬店長は、それを手持ち無沙汰に両手で転がす。
「百瀬店長のせいって……、どういうことですか?」
「恥ずかしながら俺、六年前に妻が妊娠しているときに浮気をしてね。たった一度の遊びのつもりだったんだけど、バレちゃって。それから妻がかなり神経質になったんだ」
苦笑した百瀬店長が、真面目な顔つきになって続ける。
「石橋には関係のない話なのに、巻き込んで悪かった。俺たち不倫なんてしてないのに、仕事を辞めることにまでなって、本当に申し訳ない」
百瀬店長は私に向かい深々と頭を下げた。