密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
これから出産という大きな仕事が待っているのだ。余計なストレスを背負い込んでまで、そんな低俗なやつの相手になる必要はない。

訴えるのは取り止め、俺は別の方法で葉山を糾弾することにした。

春香が勤めていたセレクトショップはカフェ同様、君塚不動産所有の複合商業ビルのテナントである。

以前、カフェチェーンの社長に春香の体調を気遣ってもらうため申し入れようという話をしたとき、春香は苦笑し本気にしていなかった。
けれども俺は妻のためならば、自分の役職を最大限利用する。

それに、テナントと良好な関係を築いて管理、運営していくのは、ビルの価値を向上させるためにも開発したデベロッパーの大切な役割だ。
管理は主に君塚不動産のグループ会社がおこなっているが、俺は本社の副社長という立場を利用してセレクトショップを運営する会社の上層部に今回の件を報告した。

すると、春香が勤めていたセレクトショップには転売を禁止する旨の社内規程があり、その違反が懲戒事由として規定されているという。企業秩序を維持する必要があるからだ。

葉山にどんな処分が下るのかは俺の知るところではないが、妻を退職にまで追い込んだ相手が正しく罰せられるのを願うばかりだった。




< 70 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop