密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
家柄がまったく違うのですごく緊張していたし、大豪邸を前にしたときはどうなることかと思ったけれど、ご両親にとても温かく迎えていただいて幸せな気持ちでいっぱいだった。

今度はゆっくり食事でもご一緒しましょう、と約束して透真さんのご実家を後にする。
帰りにスーパーで夕飯の買い物をして、マンションに帰宅すると私はあさりの和風パスタを作った。

和風パスタは、つわりがもっともひどい時期でも食べられた料理のひとつで、麺類は食べやすいのですっかり馴染みの献立となっている。
夕飯のメニューが私が食べやすいものばかりでも、透真さんは文句も言わずに必ず完食してくれる。

夕食後、リビングのソファで透真さんと並んで座り、一息吐く。
ご実家訪問は短い時間だったけれど、慣れない環境で強張った体をくったりと背もたれに預け、リラックスさせた。

「まさかうちの祖父母が透真さんのご両親と知り合いだったなんて、本当にびっくりです」
「いずれ話そうと思っていたんだが、なかなか機会がなくてね」

読んでいた本をぱたりと閉じ、透真さんは私の肩に腕を回した。

「あの、ずっと聞いてみたいと思っていたんですけど……」

聞きづらくて躊躇いながら、私は透真さんを見上げる。

「透真さんは、いつから私を好きになってくれたのですか?」

二度目に会った日にまさかの一夜をともにして、翌日にプロポーズされた。
私にとっては電光石火の成り行きだった。

たった三ヶ月の契約結婚だったけれど、期間を満了し別離後に再会したとき、透真さんは『ずっとそばにいてほしい』と言ってくれたんだ。

私は初めて一夜をともにした日に、強引さの中にある、理解し寄り添う優しさに胸を掴まれて、更に三ヶ月の同居期間で日毎に人となりや温かさに惹かれていったけれど。

透真さんはいつから私に好意を抱いてくれていたのだろう。
というか、私のどこを好きになってくれたの?

疑問でしょうがない。
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