密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
名残惜しげにチュッと何度も音を鳴らして口づけてから離れると、透真さんはゆったりと余裕を持つ力加減で、すっぽり私たちふたり分を包み込むように抱きしめた。

「苦しいよな、悪かった」

ぽんぽんと私の背中をあやすようになで、落ち着いた声色で耳もとにささやく。

「いえ、その、気持ちよくて。ここがその……きゅんとして」

うまく言えないけど、ただ苦しいから嫌なわけじゃないと伝えたくて、私は恥じらいながらお腹のわずかに下の方に手をやった。

「もしかして、キスで感じるのか?」

透真さんの意表を突かれたような声に赤面し、こくりとうなずく。

すると顔に角度をつけ、透真さんが再び私に接近した。反射的に私は仰け反る。

「……っ意地悪しないでください」

必死で小さく悲鳴をあげると、「悪い悪い」詫びるともつかずに言いながら、透真さんは目を細める。

「はあ、きみには参った」

やれやれといったふうに息を吐き、額に手のひらをあてた。

「自制しようと決意しているのに、そんなに煽られたら揺らぐだろ」
「あ、煽……?」
「頼むから、それ以上かわいくならないでくれ。こっちの身が持たない」

真向きで見つめ合い、真剣なトーンで話す透真さんに対し、言葉で際限なく甘やかされた私は顔から火が出るほど恥ずかしくてうつむく。

大事な我が子と一心同体の特別な期間を、親子三人で大切に過ごしていこうと思った。



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