序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「髪飾りの時にも気づいてた。自分で渡しなさいと思ったわ」
「……悪かった」

 最悪だと冬緒は思った。この妹に自分の思いを見透かされていたとは誤算だった。

 穂波がいつも大切そうに髪飾りをつけてくれているのを見て、少し嬉しくなってしまっていたことも。この調子なら確実にばれている。

「でも徹底的に関わらない作戦で良かったのかも? そうでなかったら、すぐに気づかれてたと思う」
「……俺はそんなにわかりやすいのか?」
「すっごく」

 初めて家に来た穂波を見た時の、冬緒の横顔を蓮華は忘れられない。いつも主張が少なく地味で控えめな兄が、思春期の少年のような顔をして照れくさそうにしていた。こんな少年みたいな兄の顔を見たのは初めてで、複雑な気持ちになったことを蓮華は覚えている。

「じゃあ、関わらないようにして良かった。酷い兄だったし、何もしてやれなかったが、それでも『兄』でいられた」

 穂波が訪れた時のことも、蓮華も冬緒も、鮮明に思い出せる。塵処理場と揶揄される、古臭くて取り柄もない、ちっぽけな白洲の家に。小さな花が咲いたようだった。

「兄様も一緒に、あたしと今度パーティーに行って、お嫁さん探しでもしましょうよ」
「気が向いたらな」

 まだ当分は気が向きそうにはないと思いながらも、冬緒は笑って頷いた。

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