序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

　椿と約束した時間よりも随分と早く目が覚めてしまった。空は薄暗く、朝になりきれてない青鈍色をしている。かたかたと、朝早い配達屋の自転車の荷台が揺れる音が、遠くに聞こえる。

　君枝には見送ったりなんかしないから勝手に出て行けと言われた。千代がこの屋敷に居ない今、自分を見送ってくれる相手など誰も居ないだろう。

（早いけど、起きようかな）

　二度寝できるような時間でもない。もともとなんだかんだ世話になった家を、最後に掃除でもして出て行こうと思っていたのだ。ちょうど良いと、穂波は布団から出て立ち上がった。

　薄っぺらいこの煎餅布団ともお別れかと、眠気まなこでぼんやり考えながら畳んでいく。

　顔を洗って、髪をとかし、掃除をする時にいつも着ている矢絣と袴に着替えた。物置から掃除用具を取り玄関に向かう。寝ている家族や侍女たちを起こさないよう、玄関周りを掃除しようと思ったのだ。

「あれ？」