序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「穂波さん?」

 玄関扉を開けて外に出ると、左側の塀に背中をもたれかけ、腕を組んだ椿が立っていた。

 互いに、なんでこんな早い時間に!?と驚いたのは言葉をかわさなくてもわかる。

「な、なんでこんな早くに……」
「穂波さんこそ……しかもまた、穂波さんのその格好を見ることになるとは」

 そう言えば椿は初めて会った時に、この格好の穂波を見て侍女だと勘違いしていた。その時はなんだか嫌な人だなと、印象が悪かったが、すぐに蓮華たちから自分を庇ってくれた椿に心を許していった。

 つい先日の話なのに昔のことのように思えるぐらい。あの時と状況が大きく変わってる。

「早く目が覚めてしまったので……お世話になった家だから、最後に少しでも綺麗にしようと思い」
「穂波さんらしい、素敵な考え方だな」

 それからなんと、俺も手伝おうと言って、椿は穂波の持っていたバケツを軽々と持ち上げてみせた。

「そ、そんな! 椿さんの上質な着物が汚れてしまいます」
「大丈夫だ。穂波さんがこの家に感謝の思いを向けるなら、俺も感謝したいんだ」

 まあ、憎たらしい気持ちの方が本当は多いんだがと、椿は冗談混じりに屋敷を睨みつけた。

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