序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
一通り掃除を終え、綺麗になった玄関を見渡すと椿は額の汗を拭った。
季節の変わり目にする、少し切なくなるような匂いがすんと漂う。まだ肌寒い朝の空気に、掃除で動かした身体の熱をほこほこ感じる。見上げれば登りかけの陽がうっすらと、白群の空からこぼれていた。
穂波は藤堂家にも着て行った、手持ちの中で一番上等な着物に着替えようと家に戻った。これでもきっと氷宮家に行けばみすぼらしいと思われるかもしれない。椿が自分を連れて行くことで、一族の人間たちから嘲笑されないか心配だ。
「荷物が少ないんだな」
「はい。白洲家に来る前に、私物はほとんどなくなってしまったんです。この家に来てからは物を買う自由もなかったものですから」
「……」
自分の不幸をさっぱりと話す穂波の様子に好ましさや強さを感じながらも、椿は思い詰めた表情をした。何かまずいことでも言ったかと黙っている椿を、穂波は少しはらはらしながら見た。
「じゃあ一つ荷物を預かってくれないか?」
「? なんですか?」
季節の変わり目にする、少し切なくなるような匂いがすんと漂う。まだ肌寒い朝の空気に、掃除で動かした身体の熱をほこほこ感じる。見上げれば登りかけの陽がうっすらと、白群の空からこぼれていた。
穂波は藤堂家にも着て行った、手持ちの中で一番上等な着物に着替えようと家に戻った。これでもきっと氷宮家に行けばみすぼらしいと思われるかもしれない。椿が自分を連れて行くことで、一族の人間たちから嘲笑されないか心配だ。
「荷物が少ないんだな」
「はい。白洲家に来る前に、私物はほとんどなくなってしまったんです。この家に来てからは物を買う自由もなかったものですから」
「……」
自分の不幸をさっぱりと話す穂波の様子に好ましさや強さを感じながらも、椿は思い詰めた表情をした。何かまずいことでも言ったかと黙っている椿を、穂波は少しはらはらしながら見た。
「じゃあ一つ荷物を預かってくれないか?」
「? なんですか?」