序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「台数も少なく、帝都の中でも一部の区間しかまだ運行していない。来て早々見れるとは、穂波さんは運が良い」

 そうやって椿は、他にも穂波が気になる物を一つ一つ丁寧に教えていった。子供のように無邪気な様子で、穂波は椿の説明に何度も頷いてみせたり質問を繰り返した。

 背の高いシックな街灯や、見たことのない色をした石畳まで、穂波には何もかもが新鮮なものに感じられた。

「楽しそうだな」

 くすりと笑う椿を見てはっとした穂波は、慌てて口元を手で覆った。

「すみません! これから椿さんの家に行く大事な時に……はしゃいでしまいました」
「良い。あんたも町を案内してくれただろう? あの時俺も楽しかったんだ」
「そんな、あれは澄人のおかげだったので……」

 澄人は捕まったと聞いたが、今頃どうしているのだろう。名前が出たことで、穂波の顔に一瞬影が差し込んだことを椿は見逃さなかった。

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