序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「花森と申します。椿様が、氷宮家の当主になる以前……六条家の頃からお仕えしております」
花森は胸元に手を添えると、深々とおじぎをした。名前のように、悠然と落ち着いている、気品のある男性だ。深い二重幅に、優しく垂れ下がった目尻が特徴的で、男らしさの中にも中性的な美しさを兼ね備えている。独特な魅力を感じさせる人だと思った。
「白洲穂波と申します。この度は、お世話になります」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。椿様から穂波様のお話は伺っており、ずっとお会いしたいと思ってました」
「花森……余計なことを言うなよ」
「もちろんでございます」
椿はどんな風に自分のことを話していたのだろう? 椿が、花森が何か話し始めないかと目を光らせているうちには聞くことはできなさそうだ。
「長旅でお疲れだと思います。お荷物を運びますね」
花森が扉の奥に合図すると、三人ほど女中が出てきて、穂波と椿の荷物を運び始めた。