序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

　声の方へ振り返ると、華やかな、明るい色をした着物を見に纏った若い女性たちが立っていた。ほんのり染まった頬に、嬉々とした輝きを宿す目といい、椿に気があるのは見て当然だった。

「お疲れでございましょう！　よろしければうちでゆっくりしていきませんか？」
「ちょっと！　抜け駆けはずるいわよ！」
「抜け駆けって、僻んでるだけじゃない！」
「椿様ー！　これ、うちの庭で採れたばかりの野菜なんです。椿様のおうちに差し入れさせてもらっても良いですか？」

　女性たちは仲間というわけではないらしい。互いを蹴落とさんばかりに、自分が前に前にと、立ち位置を争っている。

　混沌とした状況や女性たちの迫力に、穂波は思わず後ずさる。ただ、女性たちは椿に夢中なようで穂波のことは視界に入っていないようだ。

「今日は約束があって急いでいるんだ」

　椿は女性たちにそう言うと、後ろに下がった穂波の手首を掴んで自分の横に立たせた。そこでようやく、女性たちは穂波の存在に気づいたらしい。