序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「おい、穂波さんに触るな!」

 きゃーっと、さっきまで落ち込んでいたのが嘘のように、女性たちは騒ぎ始めたのだった。

(藤堂一族の人間たちと、まるで雰囲気が違うわ)

 いつもぴりぴりしていて、一族同士で馴れ合うことはほとんどない。覇権争いばかりの一族だ。でも氷宮家はまるで学校にでも居るような、友人たちが集まって和気藹々と話しているような。懐かしくてあたたかい空気が流れているのだ。

「行こう、穂波さん」
「穂波様ー、今度お話ししましょうねー!」

 けらけらと手を振る女性たちを警戒しながら、椿は穂波の肩にそっと手を回し、隠すようにその場を後にしたのだった。

「大変でしたね、椿様」
「笑いを堪えてないで、もっと助けてくれても良いんじゃないか花森?」
「申し訳ありません。ついついおかしくて。穂波様、椿様はいつもこんな様子じゃないんですよ。女性たちに絡まれても鉄仮面で、適当にあしらってるんです」

 ですが今日は、穂波さんが近くに居るからかそわそわされていて、その様子が面白かったのですと花森は口元を手で覆った。

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