序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「珍しく声を荒げられて。冷静じゃない椿様を見ることができて新鮮でした」

 椿は苛立たしそうに花森を睨むと、穂波さんは来たばかりなんだから、この家にどんな印象を受けるか心配になるだろうと呟いた。

「いきなりあんな喧しく騒いで……うちの一族の底が知れる……」
「いえ、とっても賑やかで楽しい家柄なんだなって。名前も呼んでもらえて、私は嬉しかったです」

 あんな親しげに自分のことを呼んでくれる女性は、周りには千代しか居なかったから。

「明け透けのない性格の連中が多いんだ、うちの一族は。人情に厚いというか。でもその分、感情任せで余計なことを言う時がある」

 氷宮一族。名前の印象だけで、硬派で知的な印象を受けていたが、どうやら違うらしい。椿自身はこの名の通り、冷徹な印象ではあるが……。

「だから、あんたが傷つかないか心配で」

 眉尻を下げ、不安げな表情をする椿を見て、穂波は愛おしい気持ちになった。

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