序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 それから車椅子を引かれ、文乃はまた後でねお自室に戻って行った。自然と張っていた肩が、だらりと下がる。

「穂波さん……なんだか、ここ最近の中で一番緊張していないか?」

 恐怖の緊張ではなく……床に縫い付けられた感覚、静かな世界に誘われたような不思議な緊張だった。素晴らしい絵を前にして、立ち尽くしてしまう感覚にも似ている。

「今までお会いしたことのない雰囲気を持つ方で、思考が停止してしまったといいますか……」
「そうか? 俺にとっては、穏やかで時々、気が抜けている祖母だが……穂波さんもそのうち慣れる」
「そ、そんな日がくると良いんですが」

 会ったばかりで、まだ想像がつかない。あの美しい女性の家族だと、堂々と名乗れる日がくるのだろうか。

「母方の祖母で、母が亡くなってからは父を手伝いながら俺を育ててくれた」

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