序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 穂波は錆びついた蛇口をひねりバケツに水を入れると、亡くなった時隆についてまた思いを馳せた。

 変わり者で時折、怖い一面もあったが、思慮深く、一族の中では信頼できる人間だった。穂波たちの母が亡くなった際。穂波の頼みを聞き入れ、妹の都姫を藤堂家へ迎え入れてくれたのも時隆だった。

 あの頃は都姫が藤堂家に行くことができて良かったと。妹の幸せを心から願っていたが……この一ヶ月でその思いは随分と変わってしまった。



 渡り廊下の雑巾がけを終え、バケツの水に雑巾を浸し、ぎゅっと絞り上げる。すっかり煤色に沈んだ水がゆらゆら揺れる。

 もともと白洲家に来る前から、穂波は進んで家事を行なっていた。穂波の前の家も、決して裕福ではなかったのだ。

 使用人も少なかったので人任せにはせず、自分で何事もやるという母親の言いつけがあった。そのため、こちらの方が性に合うし別に良い。穂波はうっすら額に浮かんだ汗を手の甲で拭った。

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