序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 会食後。勇は仕事ですぐに家を出て行ってしまった。一ヶ月は帰らないそうだが、穂波が手伝える氷宮の仕事を、手紙で連絡すると言っていた。

 自室に帰ろうとする文乃の後ろ姿を見て、穂波は自分から声をかけた。

「あの、文乃お祖母様の車椅子、私が引いてもよろしいでしょうか」
「あらそんな……うちに来てもらって早々、申し訳ないわ」
「いえ、大切な家族のことを知っていきたいんです」
「穂波さん……ありがとう。それじゃあ、お願いしようかしら」

 それから穂波は、いつも文乃の世話をしている使用人に教えてもらいながら文乃の家まで車椅子を引いて行った。

 部屋から出て行く穂波と文乃を見届けながら、花森は席に残っている椿に声をかけた。

「穂波様はもっと物静かで、主張が苦手な方なんだと思ってました。意外と活発な方ですね」
「初めて会った頃の彼女は、もっと物事をはっきりと言う明朗快活な少女だった。少しずつ、穂波さんの明るさを取り戻してやりたいんだ」

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