序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 人の行き交いの多い、忙しない帝都の道を涼葉は慣れた調子で進んでいく。穂波はついて行くだけで必死だった。

「こら、危ないよ!」
「す、すみません」

 馬車を操縦する御者に、穂波が怒鳴られているのに気づき、涼葉は足を止めて振り返った。

「ちょっと、とろすぎなんだけど」

 やっと話しかけてもらえたと思ったら罵詈で、切なくなる。なんとか涼葉の元に追いつくと、また並んで歩いてはくれずに前へ前へと行ってしまった。だがさっきよりも心なしか、歩く速さが遅くなった気がした。

「なんで私がお守りをさせられなきゃならないのか……今日の依頼、全然私向けじゃないし」

 依頼人の家に近づくにつれ、ぶつぶつと涼葉は文句を言い始めた。勇が穂波に向いているだろうと、涼葉に良いところを見せてやれと送ってきた依頼だ。

(椿さん、怒ってるかな)

 この依頼の話は無視して、涼葉にやらせておけと。家から出ないよう椿に言われていたのだが、出てきてしまったのだ。

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