序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「ただの家出だよ、どうせ」

 でも仮に家出だったとしても、そこに至るまでの理由があるわけだ。ただ見つけて連れ戻せば良いだけの話ではない気がした。

 自分自身も何度も、白州家から逃げ出したくなったことがあるからこそ、穂波は涼葉の言葉にすんなり腹落ちすることができなかった。





「ようこそお越しくださいました、お待ちしてました!」

 依頼人の家に辿り着くと、目尻に涙を浮かべた心細そうな男性が穂波たちを出迎えた。強い特徴のない、まさに平凡な男性像そのもといった身なりをしている男だった。鼻の頭がほんのりと日焼けしている。普段は外仕事をしているのだろうか。

「六条涼葉です」

 涼葉は慣れた様子で、以前、椿が穂波にくれた物と似た名刺を差し出した。

「こっちは新人です」

 挨拶するよう、涼葉が目で訴えてくる。

「白州穂波と申します」
「涼葉さん、穂波さん、今日はありがとうございます……どこにも頼れる場所がなく、本当に、困っていて……」

 依頼人の男の、腹の前で重ねている手は微かに震えていて、心細い気持ちは汲み取ろうとしなくても伝わってくる。

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