序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
『やはり便利な念力だな。触れた物をすり抜けられるとは』
『まあ、そのせいで悪事にばかり手を染める人生になっちまいましたが』

 忍び装束を纏った二人組の男が、天井裏で話す映像が流れ出す。二人とも口元を布で覆い、頭巾をかぶっており顔立ちは見えない。

『けど先輩の力の方がすごいじゃねえですか。空間転移系の念力は、羨望の的ですから』
『準備に時間がかかるのが難儀でな。お前のようなすぐ発動できる念力の方が羨ましい』

 へへっ、そうですかねと、後輩らしき男は口角をあげて笑ってみせた。触れた物をすり抜けられる力と、空間転移の力。強力な念力を保持している。

『先日、目星をつけた物を回収しておけ。その間に標的を拐う準備をする』

 目星をつけた物? 何のことだろう。標的は椎菜のことに違いないが、彼女を拐っただけでなく、家から何か盗んでいたというのか。

『了解です。よいしょっと』

 後輩の男は、もう一人の男の手首を掴み、もう片方の手で天井に触れた。二人はするりと天井をすり抜け、そのまま床へと降り立っていく。

 ここで思念は切れる。





「涼葉さん! その床にも触れさせてください」
「なんか視えたの?」

 穂波は自分の視た光景について涼葉に説明した。当たらないでほしかった予想が的中してしまっていた。これは家出でもなんでもなく、念力による、盗難と誘拐事件だ。

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