序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜


「依頼人、この家で何か盗まれた物でもあるの?」
「いえ、盗まれた物は特にないかと……奥深くしまってる家宝のような物もうちにはないんですが……もう一度確認してみます!」

 依頼人は駆け足で自分の部屋に向かって行った。

 確かに、妻が拐われたとなれば物盗りの線も疑うに違いない。依頼人も金品の盗難について確認したはずだ。

「視てみます」

 穂波は、さっき思念を読み取った天井のちょうど下にある床に触れた。目を閉じて意識を研ぎ澄ませる。





『先輩、例の物ですが……台所の床下に変わらずあり、回収しました!』
『こちらも準備ができた。すぐに退却しよう』
『了解です』

 また二人組の男たちの思念が流れ始める。この家から盗難したかった物を回収したらしい。持っている物に意識を集中させると、なんだろうか、後輩の男の手の中に筒状の物を確認できる。

 先輩らしき男は、居間の床に文字や紋様を並べた円状の陣を書いていた。都姫の念力と似ている、あらかじめ儀式を施す念力だ。

 男は手で印を結ぶと、円状の陣の中に拳を突きつけた。ぶわりと風が舞い、青白い光が部屋中を包み込む。

 この音だと穂波は思った。椎菜が聞いた鈍い物音は、男が床に拳を突きつける音だった。

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