序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
三.六条椿
「……」
玄関扉の前に立っていたのは灰色の和服の上に、黒のとんびコートを羽織った長身の男性だった。肩まで届いた黒い髪は、一目見ただけで手入れが施されているとわかる。美容に人一倍気を遣っている蓮華よりも艶めかしい。
(とても綺麗な人……)
だが切長の目の奥に光る、月色の瞳は冷たい色を帯びていて、目が合った瞬間、思わず寒気が走るほどだった。人並外れたその美しさが、彼の冷たい表情をより際立たせる。
白洲家の庶民的な玄関に、世の中の綺麗なものを詰め込んだ宝石箱のようなこの男は、大層不釣り合いだった。
男は穂波の姿を上から下までまじまじと、眉間に皺を寄せながら見た。
「おい、俺は白洲家の人間を呼べと言ったはずだが。なぜ侍女を呼んだ?」
「穂波様は、れっきとした白洲家のお嬢様です!」
きっぱりと言い返す千代の言葉に男は目をまばたきさせると、もう一度穂波を見つめ返した。顎に手をやりながら、首を傾げ、怪訝そうな表情を浮かべている。
「いくつも藤堂の家を回ってきたが。こんな物好きな格好をしている女は初めてだ」
藤堂の家を回っている……この男は何者なのだろうと疑問を抱きながら、穂波はなるべく自然に言葉を紡ぎ出そうと口を開いた。
玄関扉の前に立っていたのは灰色の和服の上に、黒のとんびコートを羽織った長身の男性だった。肩まで届いた黒い髪は、一目見ただけで手入れが施されているとわかる。美容に人一倍気を遣っている蓮華よりも艶めかしい。
(とても綺麗な人……)
だが切長の目の奥に光る、月色の瞳は冷たい色を帯びていて、目が合った瞬間、思わず寒気が走るほどだった。人並外れたその美しさが、彼の冷たい表情をより際立たせる。
白洲家の庶民的な玄関に、世の中の綺麗なものを詰め込んだ宝石箱のようなこの男は、大層不釣り合いだった。
男は穂波の姿を上から下までまじまじと、眉間に皺を寄せながら見た。
「おい、俺は白洲家の人間を呼べと言ったはずだが。なぜ侍女を呼んだ?」
「穂波様は、れっきとした白洲家のお嬢様です!」
きっぱりと言い返す千代の言葉に男は目をまばたきさせると、もう一度穂波を見つめ返した。顎に手をやりながら、首を傾げ、怪訝そうな表情を浮かべている。
「いくつも藤堂の家を回ってきたが。こんな物好きな格好をしている女は初めてだ」
藤堂の家を回っている……この男は何者なのだろうと疑問を抱きながら、穂波はなるべく自然に言葉を紡ぎ出そうと口を開いた。