序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「お茶をお持ちしました」

 千代は椿の前に、茶と菓子を置くと、ゆっくりと部屋の隅に下がった。

「ああ、構いなく。この家の人間に一言挨拶できればすぐ帰る」

 椿の探し人とは、そんなに一目見ればわかる人間なのだろうか?

 穂波の中で、むくむくと好奇心が湧き上がる。聞いてみたいという気持ちと、いやいや詮索するなんて下世話かもしれないという気持ちが葛藤する。

 しばらく、椿が千代の出した茶と菓子を楽しむ様子を正面で眺めながら、穂波は聞いていいものかと悩み続けていた。

「帰ったわよ! 穂波、荷物運んで頂戴!」

 だがそんな葛藤は下から聞こえて来た声に、しゃぼん玉がぱちりと割れるように吹き飛んだ。思いの外早く、白洲家の家族たちが帰って来たのだ。

 出かける時は何も言わずに置き去りだったにも関わらず、帰って来たと思えばこの調子だ。

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