序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 路夜に肩を掴まれた椿は、玄関扉の前で一瞬だけ足を止めた。

「穂波さんが拐われた」
「は? 誰に」
「お前の親戚の、鷹泉怜といったか。一緒だったそうだ」
「怜が? 話についてけねえ。ちゃんと説明しろ」
「説明している時間はない」

 問いかけてくる路夜を振り払い、椿は外へと出て行った。

「おい!」

 わけもわからぬまま、路夜は椿を追いかけ、花森もその後に続いた。

「椿様!?」
「そんなにお急ぎになって……」

 敷地内の、氷宮一族の人間たちが驚いた様子で椿を見る。

 自分らしくないだとか、そんなことを気にしている場合じゃなかった。

 穂波が殺される未来を視たのに。その未来を伝えられなかった。怯えさせたくないという思いが隙を生んでしまった。穂波の身に何かあったら、自分は何の為にもう一度彼女と出会った。





『生きていれば未来は変えられます。だって今、変わったでしょう? だから諦めないで……お願い……』





 前日の夜から大降りの雨が続いていた、初夏の夜。初めて会った自分の裾を掴み、涙を流してくれた。過去を視ることができる、運命の鍵の少女。

 やっと見つけた。彼女を幸せにすると決めたのに。

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