序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「なんだよ、椿らしくねぇ。つうか誘拐ってどういうことだよ、それこそ鷹泉を頼れっての」

 俺ら警察組織だぞこの野郎! と、背後から怒鳴り散らしてくる路夜の声に、椿は意識をまた現実に戻した。

「路夜様、椿様なりに頼られているのです。着いてきてくれるだろうという気持ちの表れです」
「くそっ、ふざけんな。そうやって学生ん時から振り回してくれやがって」

 いいよ、ついてってやらぁと、路夜は吹っ切れた様子になり舌打ちをした。文句を垂れ流し続けながらも、なんだかんだ椿の後を追うのだった。






 椿が足を止めたのは、氷宮の敷地内にある一軒家だった。一階建の、茅葺き屋根のもっそりした佇まい。じめじめした雰囲気が漂うこの家、魔女の家と比喩しても過言ではない。

「もみじ、居るか!?」

 玄関の戸をがらりと横に引くと、靴の脱ぎ場だけあり、すぐに狭い居間が広がっていた。中央にある囲炉裏の横で、魚のように身体をくねらせて寝ていた小柄な少女は、椿の顔を見るとさっと正座した。

「椿様、どうされましたの。慌てたご様子で」

 頭部の左右にそれぞれ、団子型に結んだ桃色の髪が、ぴくぴく震えている。そういう本人の方が慌てた様子だ、忙しない様子で口元のよだれを拭った。

「お前の念力が必要だ。今すぐに連れて行ってほしい場所がある」

 部屋の中までじめじめしていて、若干かび臭い。路夜は鼻をつまんで部屋を見渡してから、少女をじっと見つめた。

「氷宮もみじ……氷宮家一の空間転移念力の使い手か」
「はい。もみじ様の念力があるからこそ、氷宮は成り立っていると言えます。一度訪れた場所と氷宮の敷地を繋げてくださっている。おかげで皆、迅速に依頼現場へと向かえるのです」

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