序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「帰りは繋げられないから、徒歩で帰宅をお願いしてるんですの。あと念力使うのは疲れるの。近場の依頼は、自力で行くようお願いしてますの」

 むふーと、饅頭のようにぷっくりとした頬を蒸気させ、もみじは腕を組んでみせた。路夜は内心、今の話のどこに自慢気にする要素がと思ったが、面倒そうなので言葉には出さないでおいた。

「空間転移念力は、色んな種類があるな。行きも帰りも繋げられる場合、大掛かりな準備や条件が必要で複数箇所は繋げられない場合……」
「はい。それでいうともみじ様の念力は、一度行った場所を思い浮かべるだけで転移できるため、前提条件が少ないのです。帰りが少し不都合なだけで」
「ですの。前に飛ばし間違えて、大目玉を食らったこともあり、ひやひやですの」

 みんなのためにやってるのにぃと、しくしくもみじは泣きまねをした。

「とまあ冗談は置いといて、急ぎのようなのですぐ飛ばしますの。椿様の向かわれたい場所はどこですの?」
「帝都中央にある時計塔。繋げられるか?」

 穂波が、血の海の中で倒れている光景……いつ、どこの光景だったのか、椿はずっと考えていた。

 大通りで倒れている穂波を、その場に居合わせた人間たちが見下ろしている。

 病院に運べと叫ぶ声。遠くから聞こえてくる太鼓の音。いつもより人通りが多い。微かに見えるゆらりとした丸い影……提灯の影だ。

 やはりあれは、四片祭の光景だったのだ。

 椎菜の事件を通し、四片祭の話が出てきた時。酷く嫌な予感はした。だから穂波が、この一件には関わらないようにしたが……祭りの前日に、敵自ら氷宮の敷地に入ってくることまでは読めていなかった。

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