序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 そして、最後に聞こえたのは鐘の音だった。帝都中央の時計台では、十二時から十八時まで、一時間おきに鐘が鳴るよう設定されている。随分と近くから聞こえたということは……時計台を基点に探せば、穂波たちを見つけられるかもしれない。

「おい、路夜。手を貸せ」
「あ? 助けてやろうとしてんだろうが」
「違う。手だ、手」

 椿は自分の手を差し出すと、路夜にも手を出すように顎をくいっとあげ要求した。路夜はぴんときたようで、額に青筋を浮かべながら、はいはいと手を差し出した。

「久しぶりすぎて忘れてた。そういう奴だったなお前は」

 椿は路夜の手に触れると、念力で未来を読み取った。

 学生時代から、よく行動を共にしていた路夜に、椿は未来視をさせてほしいと頼む時があった。自分の未来を読み取ることはできない代わりに、自分と行動を共にしている路夜の未来を読み取っていたのだ。

 その代わり、未来で視えたことを路夜に教え助けてやったことも幾度とある。手を貸せというのは、いつしか二人の合言葉になっていた。

(未来視を妨害されている)

路夜から読み取れた未来でも、穂波から読み取った未来と同じ光景しか見えなかった。

 椿の視る未来は、その時の状況で常に変わっていく。いつも同じ光景しか映らないなんてことはあり得ない。

 未来を読まれないよう妨害している人間が居る。

「何か視えたか?」
「……視えなかった。厄介だ、未来視対策までされてる」

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