序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
十六.私が当主様を殺した理由
「いってぇ……雑な転移だな。鷹泉の転移担当と大違いだ。無骨な氷宮らしいといえば、氷宮らしいが」

 コートの砂埃をはたきながら、路夜は舌打ちすると今度こそと煙草に火を点けた。

 日頃管理されていない、埃っぽい物置のような場所だった。時計台の最上階に、椿たちは転移すると、丸型の時計の裏面が目前に広がっていた。複数の金色の歯車が、規則正しく音を立てながら回転している。時計の周りはガラス張りになっていて外の様子を見ることができる。

「時計の裏面、管理室か」
「穂波様たちはこの近くにいらっしゃるのですか?」

 椿は、恐らくそうだと頷いた。

「穂波さんが殺される未来を視たんだ」
「藤堂天音と都姫にか?」
「ああ」

 時計横のガラス壁を椿は指さした。路夜と花森は窓の外に目をやると、人々が行き交う帝都の大通りが見える。

 明日の祭りの準備はほぼ終わっているようだ。

 通りの電柱に、提灯を吊るした紐が隈なく結び付けられている。祭りの前日から営業している屋台が多く、そのせいで人通りも増えているようだ。

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