序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 そこでまた、椿の脳裏によぎってくるのは椎菜の事件だ。藤堂家を除籍された男たちは、わざわざ彼女を誘拐し、四片祭における警備の機密情報を盗み出した……情報だけを盗まず、椎菜を誘拐したことにもずっと違和感があった。

「椎菜さんの事件と、穂波さんのこの事件は、何かしら繋がっているとは考えられないか?」

 どちらも違う事件だが、四片祭という大きな共通点があることに、椿は引っ掛かりを覚えていた。

「どっちの事件も、裏に本当の狙いがある」
「それはわかって……」
「そう。わかっちまってるんだよな。ばればれなんだ。それも敵の狙いなんじゃねぇか?」
「……どういう意味だ?」
「あからさまに怪しい条件が重なってるから、本当にこの時計台の下で婚約者が殺されるのか? 自分で未来を視ながらも、お前は確信できないでいる。他の未来の可能性も考えてるだろ」
「……」
「でも俺が、椿を陥れたいなら……お前が選んだ方とは違う選択肢で、お前の婚約者を殺す」
「!」

 路夜の言うことは正しいと、花森は横から聞いていて思った。

 椿は今、自分の視た未来を疑っている。だが、疑ってもともと視ていた未来とは別の選択をし、結局、選ばなかった方の選択で穂波が死んだら……それは何よりも椿を苦しめることになるだろう。

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