序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「なんの音だ!?」

 祭り特有の賑やかな音や和やかで懐かしい雰囲気……その全てを、巨大な爆発音が、一瞬で覆い尽くした。

「ば、爆発だ!」

 帝都中央にある、帝都の象徴の一つにも数えられる時計台が……燃えている。火花をあげながら、少しずつ時計盤が下へと傾いていく。今にも崩れそうだ。

 和気藹々と、祭りを楽しんでいた人々の声が悲鳴に変わっていく。

「時計台付近の皆さん、避難してください!」

 警官服を着た、祭りの警備に当たっていた鷹泉の人間たちが、時計台の下に居た人たちを誘導する声をあげた。我先にと、誘導された方へ人々は逃げて行く。

「驚きました。まさか時計台を爆破されるとは……常人、否、帝国の守護者である鷹泉の人間とは思えない発想です」

 その様子を、時計台付近の建物の陰に隠れながら、椿と花森は密かに見ていた。

「あいつは昔から、ああいう奴なんだ」

 路夜の考えは至って単純明快なものだった。椿が視た、時計台から穂波が転落死する未来。未来そのものを壊すことで、都姫の想像の範疇を超えると考えたのだ。

 祭りで多くの人が行き交う道。遠くから聞こえる太鼓の音。穂波が転落死する時計台。全ての状況を消し去る。

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