序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 都姫の言った、お父様と言う言葉に、穂波の心臓がどくりと大きく脈打った。このお父様というのは、普通に考えれば穂波の父にあたるが……どうにもそうには思えなかったのだ。

「呑気で、平和ぼけしてる穂波お姉様に教えてあげる。私の父親は、あんたの父親とは違う。藤堂八潮。八潮様が私の本当の父親だったの。私は穂波お姉様……あんたの温情で藤堂本家に入れたんじゃない。もともと藤堂本家の、正統な血筋なのよ」
「! 都姫の父親が、藤堂八潮……」

 頭がぐわんぐわんと揺れ、覚束ない。ずっと同じ両親の下、たった一人の姉妹だと思っていた。しかし都姫の本当の父親が、あの藤堂八潮だったなんて。

 藤堂八潮。時隆の前当主で、彼を指名して当主の座を引き継いだ。時隆とはまた違った才能溢れる当主だった。

 例えるなら、時隆は月であり、対する八潮は太陽のような男だ。穂波は幼い頃に何度か、八潮の姿を見たことがあったが、いつも一族の人間たちに囲まれ、周りは笑い声が絶えなかった。

 この話が本当なら、都姫に刺され意識不明の母は、藤堂八潮と関係を持っていたということにもなる。

「私たちの母親はあんたの父が亡くなった後、八潮の妾の一人になり、私を身籠もった。なのに……本当に使えない。その後、藤堂本家に住める機会をあの女は自ら放棄したのだから」
「なぜ、母様はそんなことを」

 藤堂本家で暮らせれば、生活にまず困ることはない。十分すぎる恵まれた暮らしを送ることができるはずだ。

 だが、穂波は物心ついた頃から、母と都姫と共に、決して裕福とはいえない暮らしを送ってきた。使用人も多くは雇えず、自分のことは自分でやれと教育されてきたのだ。

 都姫が母を恨むようになったのも、このことが原因なのだろうか。

「全部、時隆さんのせいよ」
「時隆様の……?」
「ええ。自分がこんなみすぼらしい生活をするはめになったのが、誰のせいかも知らず、馬鹿みたいねお姉様」

 時隆は黙って俯いている。これが、時隆が都姫に申し訳ないと思っていた理由に繋がるのか?

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