序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
「時隆さんのせいで、天音お姉様の母である正妻の美琴(みこと)様も、私の母を初めとした他の妾たちも……皆、不幸になった。父様は他の女性たちを切って、時隆さんを選んだから」
「!? 八潮様が、時隆様を……」

 一族の中でも、嫁を貰うよう言われながらも、ずっと時隆は無視し続けていた。彼の思念に触れ、大切な存在が居たことがわかってきたが、それが前当主の八潮だったとは……夢にも思わなかった。

 時折見せる、柔らかく中性的な雰囲気や、その美しい容姿といい、時隆が同性の心すら掴むことに違和感はない。

 現に、時隆に尊敬以上の想いを抱いている一族の男性は、穂波が知る限りでも何人か居た。たまたま思念を読み取ってしまい、知ってしまったのがきっかけではあるが、相手があの時隆ならと大きな驚きはなかった。

「その男は泥棒猫よ。後から出てきて当主からの愛情を独占して、皆の生活を奪って……私の母親は、他の誰よりも先に本家を出ることを決めた。他には抵抗して、本家での生活を望んで今もまだ残り続けている人たちも居るけれど。私たちはそうはならなかった」

 時隆は何も否定することなく、黙って都姫の話を聞いていた。穂波には時隆が、他者の生活を壊してでも、自分の想いを押し通すような人間にはとても思えなかった。都姫の話は、本当なのだろうか?

 そして都姫が真に望んでいたのは、本家での、八潮の娘としての暮らし。それを奪った母と時隆に対して恨みを抱いていた。だからどちらも殺そうとした……そんなことをしても今更過去は変えられない、何にもならないのに。

「だから時隆さん、あんたには私の気持ちなんてわからない。八潮の娘で、八潮と同じ念力を発現したこの私が……なぜ十数年もあんな惨めな暮らしをさせられなきゃいけなかったのか? あんたに奪われたせいだ。ねえ、私の人生を返してよ」

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