先生。~ 放課後の教室 ~
「誰かに見られてたとかはない?」

愛結美が深刻な面持ちで聞いた。

「いや…、見られてはないと思う…。」

そもそも、見られたところで相手が津田先生だと

特定できるわけが無い。

私は続けた。

「でも、あの日3年生が教室で補習してた。

教室の電気もついてたし、騒がしかったから」

確かに、あの日は3年の教室に人がいた。

だけど、噂が流れているのは今のところ

2年の女子の間だけの事。

もし仮に、3年の誰かがそれを見ていたのだとしたら

きっと3年の間でも同じ噂が流れているはず。

もしくは…。

(2年の女子のうち、誰かがこの事を知っていた…?)

「…とりあえず今は、うちらの学年ではるの事が噂に

なってるって事しか分からない。」

心優は続けた。

「はる、ごめん。うちがはるに、"先生に

バレンタイン渡したら?"って提案したから…」

そう言って、申し訳なさそうに少し俯いた。

「ううん、謝らないで。みわは何も悪くない。

むしろ感謝してる。

あの時、みわが言ってくれなかったら、わたし

きっと後悔してた。」

"ありがとう"、私はそう言って心優の背中を

優しく撫でた。
< 25 / 28 >

この作品をシェア

pagetop