先生。~ 放課後の教室 ~
私が周りの視線に対して気を取られていると、

津田先生は私の耳元近くへ顔を近づけた。

よそよそしかった私の動きが一瞬にして止まる。

「ガトーショコラ美味しかった。ありがとう」

声を潜めてそう言うと、私の反応を見る前に

先生は教室を出ていった。


一瞬の出来事だった。

周りに気を取られ、気付くと津田先生の顔が

耳元の傍にあった。

感情が複雑に絡み合う。

喜んでもらえてすごく嬉しい。

その上、本人の口からも直接感想を聞けた。

ただ…。

津田先生だけには、この噂のことは

知られてほしくなかった。

噂のことを知ってしまったら、先生はどう思うだろう。

困らせてしまうかな。

私から距離を置いたりするのかな。

そんなの…、耐えられない。

(津田先生に、嫌われたくない)

このままいっその事、私から離れた方がいいだろうか。

迷惑をかけてしまうくらいなら…。

だけど…。

(そんなのできっこないよ…)

こんなに先生のこと、大好きになっちゃったもん…。

いつもみたいに話したい…

いつもみたいに笑っていたい…
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