*触れられた頬* ―冬―
やがて身の高さを変えぬままベッドのこちら側に現れた姿は、車椅子に座っていて、膝の上には厚手のブランケットが覆い被さっていた。
「お、母さんっ──」
予想もしていなかった全貌に、モモの身体は引き寄せられるように駆け出して、椿の足下にしゃがみ込んだ。
片手は車椅子の肘掛けを掴んだが、反対の手はブランケットに触れ、その先にあるべき物に触れられず、手の先の空間がひしゃげて、ハッと引き戻してしまった。
「あ、脚が……」
震える声で、それでも何とか顔を上げ、目を合わせる。
「驚かせてしまってごめんなさい。桃瀬……と、呼んでも良いのかしら? 呼べる資格が、私にはあるのかしら……。貴女を置いてきた罰が当たったの……貴女を迎えに行けなくて……本当に……ごめんなさい……」
椿はモモの髪をそっと撫でようと手を差し伸べたが、それすらもいけない気がして、その手で再び顔を覆ってしまった。
モモはもう一度、恐る恐る椿の膝に触れる。
その下には、伸ばされている筈の……両脚が、無かった──。
「お、母さんっ──」
予想もしていなかった全貌に、モモの身体は引き寄せられるように駆け出して、椿の足下にしゃがみ込んだ。
片手は車椅子の肘掛けを掴んだが、反対の手はブランケットに触れ、その先にあるべき物に触れられず、手の先の空間がひしゃげて、ハッと引き戻してしまった。
「あ、脚が……」
震える声で、それでも何とか顔を上げ、目を合わせる。
「驚かせてしまってごめんなさい。桃瀬……と、呼んでも良いのかしら? 呼べる資格が、私にはあるのかしら……。貴女を置いてきた罰が当たったの……貴女を迎えに行けなくて……本当に……ごめんなさい……」
椿はモモの髪をそっと撫でようと手を差し伸べたが、それすらもいけない気がして、その手で再び顔を覆ってしまった。
モモはもう一度、恐る恐る椿の膝に触れる。
その下には、伸ばされている筈の……両脚が、無かった──。