*触れられた頬* ―冬―
[30]会えなかった理由と二人の関係
椿の嗚咽はしばらく続いた。
時々カミエーリアが心配そうに戸口から覗いたが、凪徒が後で全て説明することを約束すると、母親を心配して背中をさするモモに柔らかな微笑みを送り、安心したようにキッチンへ消えていった。
椿は時々落ち着いては、母親を看取った後の話をポツリポツリと進めたが、寄せる波のように高ぶりがやって来ては、涙が言葉を途切れさせた。
椿の母は、モモを施設に置いて去った数日後の渡航から、約三ヶ月で亡くなったという。
それから葬儀と身の回りの整理を済ませ、日本へモモを迎えに行く為に空港へ向かう途中、その事故は起きた。
まだ冬の始まりの街を一気にやって来た寒波が襲い、うっすら初雪の積もった路面は急激に凍りついていた。
自家用の運転手に任せて後部座席に座っていた椿の車は、二十台以上を巻き込んだ玉突き事故の、ほぼ真ん中に位置していたのだという。
もはや記憶すらないが、車両の何か硬い金属に両脚を挟まれ、それは抉るように喰い込んだ。
周りは大破した車両が炎上し、火の海の中で救助の手はすぐに近付けなかった。
時々カミエーリアが心配そうに戸口から覗いたが、凪徒が後で全て説明することを約束すると、母親を心配して背中をさするモモに柔らかな微笑みを送り、安心したようにキッチンへ消えていった。
椿は時々落ち着いては、母親を看取った後の話をポツリポツリと進めたが、寄せる波のように高ぶりがやって来ては、涙が言葉を途切れさせた。
椿の母は、モモを施設に置いて去った数日後の渡航から、約三ヶ月で亡くなったという。
それから葬儀と身の回りの整理を済ませ、日本へモモを迎えに行く為に空港へ向かう途中、その事故は起きた。
まだ冬の始まりの街を一気にやって来た寒波が襲い、うっすら初雪の積もった路面は急激に凍りついていた。
自家用の運転手に任せて後部座席に座っていた椿の車は、二十台以上を巻き込んだ玉突き事故の、ほぼ真ん中に位置していたのだという。
もはや記憶すらないが、車両の何か硬い金属に両脚を挟まれ、それは抉るように喰い込んだ。
周りは大破した車両が炎上し、火の海の中で救助の手はすぐに近付けなかった。