＊触れられた頬＊ ―冬―

［31］二人の出逢いと意外な繋がり

「モモ……紛(まぎ)らわしい言い方すんなって。俺が説明するから」

「は、はい～すみません……」

　凪徒はぼそっと呟(つぶや)き、気まずそうなモモの返事に頷(うなず)いて、目をパチクリさせた椿の方へ顔を向けた。

「モ……あ、いえ、お嬢さんは中学卒業まで、あの施設で育ちました。自分は高校まで体操の選手だったのですが、色々と事情がありまして、大学の途中で巡業サーカスの空中ブランコ乗りに転向したんです。其処へお嬢さんは偶然入団されて、まもなく三年になります。彼女に空中ブランコを教え、パートナーを組んでいるのが自分です」

　──椿さんは……どう思うのだろう？

　凪徒は一息に説明して、そして戸惑った。

　十七歳と云えば大半は女子高生としてまだ勉強している最中だ。

　施設暮らしの為に義務教育しか受けられなかったのだと再び自分を責めるのか。

　それも就職先がサーカスなんて、かなり異質であることは間違いない。

　以前の杏奈のように「危ないから辞めなさい」と説得するのか──凪徒は緊張の面持ちで椿の反応を待った。