*触れられた頬* ―冬―
「サーカスで私のことを聞いたのですね? 私も未だこちらに暮らしていた小さい頃、良く祖父に連れられてショーにも楽屋にもお邪魔致しました……まだユーリーが団長になる前のことです。彼のピエロ芸には大変楽しませていただきました。祖父は自分の演舞を見たことのない団員達にも「伝説のブランコ乗り」として知られておりましたので、亡くなった今でも内輪では語り草のようです。お陰様で大人になって帰国しても……こんな身体でも、オールド・サーカスのスタッフとは仲良くさせていただいているのです」
「はぁ……ああ──」
感心と感激と驚愕と……沢山の想いが溢れ出た大きな溜息をついて、凪徒も黙ってしまった。
目の前の母娘がロシア貴族の血を持つことだけでも仰天の域であるのに、その血筋に「伝説のブランコ乗り」と言われた人物が存在するなんて──。
「はぁ……ああ──」
感心と感激と驚愕と……沢山の想いが溢れ出た大きな溜息をついて、凪徒も黙ってしまった。
目の前の母娘がロシア貴族の血を持つことだけでも仰天の域であるのに、その血筋に「伝説のブランコ乗り」と言われた人物が存在するなんて──。