*触れられた頬* ―冬―
殆どの喧騒が流れ去っていった頃、それに続こうとモモもようやく立ち上がったが、隣の凪徒は腰を上げる気配もなく、
「モモ、トイレか?」
自分の膝に頬杖を突き、ひょんなことを訊いたので、モモは「え?」と言葉を返した。
「いえ、だってもう出ないと」
「いいんだ。これからスタッフが迎えに来るから、此処で待ってろ」
「……え?」
訳も分からず、とりあえず隣の席へ戻るモモ。凪徒はそれを見下ろし、
「明日の公演、親父の金で貸し切ってやった」
「ええっ!?」
ニンマリ笑って大それたことを告白した凪徒に、モモは思わずシートの上で飛び跳ねた。
「実際明日は休演日なんだが、事情を説明したら快諾してくれたんだ。これから団員と打合せをして、リハーサルと本番は明日だ」
「リ、リハーサル? 本番?」
静まり返った場内に、モモのすっとんきょうな声が響き渡る。
「母さんに見せたいだろ? ──お前の舞を」
「あっ……──」
鮮やかに決められた凪徒のウィンクと説明に、モモはハッとして両手で口元を覆った。
──自分の演舞を、お母さんに──!?
「モモ、トイレか?」
自分の膝に頬杖を突き、ひょんなことを訊いたので、モモは「え?」と言葉を返した。
「いえ、だってもう出ないと」
「いいんだ。これからスタッフが迎えに来るから、此処で待ってろ」
「……え?」
訳も分からず、とりあえず隣の席へ戻るモモ。凪徒はそれを見下ろし、
「明日の公演、親父の金で貸し切ってやった」
「ええっ!?」
ニンマリ笑って大それたことを告白した凪徒に、モモは思わずシートの上で飛び跳ねた。
「実際明日は休演日なんだが、事情を説明したら快諾してくれたんだ。これから団員と打合せをして、リハーサルと本番は明日だ」
「リ、リハーサル? 本番?」
静まり返った場内に、モモのすっとんきょうな声が響き渡る。
「母さんに見せたいだろ? ──お前の舞を」
「あっ……──」
鮮やかに決められた凪徒のウィンクと説明に、モモはハッとして両手で口元を覆った。
──自分の演舞を、お母さんに──!?